14.分業のメリットと「調整」の必要性
中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)
企業経営理論
第14問
組織における分業と調整に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 作業現場において、仕事を分業し、個々の作業範囲を特定の領域に狭く限定すると、作業者のスキルが均質化し、業務の幅が広がるため、キャリア形成の選択肢も増える。
イ 作業手順を標準化し、作業内容を確定させることは、計画目標の達成率を高め、生産性向上につながる。このような標準化と計画目標の関係は、「計画のグレシャムの法則」として知られている。
ウ 仕事の分業が過度に進むと、組織メンバーは自分の仕事が組織全体にどのような意味を持っているか実感できず、仕事への意欲が低下することがある。こうした現象は、「アンダーマイニング効果」として知られている。
エ 仕事の分業を進めると、個々の作業が単純化され、機械化が容易となるため、各工程間の調整が不要となり、業務は効率化されやすい。
オ 定型的な作業は標準化によってあらかじめ調整し、想定外の事態には上位層が事後的に対応することで、仕事は効率的に行われる。
この問題を解くための知識は、組織の基本原則である**「効率」と「心理」のトレードオフ**です。
- 分業のメリット: 仕事を細分化すると、習熟(慣れ)が早まり、機械化もしやすいため、生産性が向上します。
- 分業のデメリット: あまりに細分化しすぎると、仕事が単調になり、人間としての意欲(動機付け)が低下します。
- 調整の必要性: バラバラに分担した仕事は、放っておくとバラバラのままです。標準化(マニュアル化)したり、上位者が指示を出したりして、全体を統合(調整)する必要があります。
🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)
この問題は、「用語の定義」が正しく使われているか、そして**「現場の感覚」として自然か**を判定するゲームです。
- ア:個々の作業範囲を狭く限定すると、〜キャリア形成の選択肢も増える。
- ❌ 間違い: 逆です。やることを極端に狭めれば、そのスキルしか身につきません。キャリアの選択肢はむしろ狭まります。
- イ:〜標準化し、〜達成率を高めることは、「計画のグレシャムの法則」として知られている。
- ❌ 間違い: ここが「気の利きどころ」。「計画のグレシャムの法則」とは、「ルーチン(定型業務)に追われて、長期的な計画(非定型業務)が後回しになる」という悪い意味の法則です。標準化のメリットを指す言葉ではありません。
- ウ:〜仕事への意欲が低下することがある。こうした現象は、「アンダーマイニング効果」として知られている。
- ❌ 間違い: 「アンダーマイニング効果」とは、「好きでやっていたことに報酬を与えると、やる気がなくなる」現象です。分業による意欲低下は、単なる**「人間疎外」や「職務内容の不全」**です。
- エ:個々の作業が単純化され、〜各工程間の調整が不要となり、〜
- ❌ 間違い: 単純化しても、工程が分かれている以上、それらを繋ぎ合わせる**「調整」は必ず必要**になります。調整が「不要」になることはありません。
- オ:定型的な作業は標準化によってあらかじめ調整し、想定外の事態には上位層が事後的に対応することで、仕事は効率的に行われる。
- ✅ 正解: 完璧に理にかなっています。普段のことはマニュアル(標準化)で流し、例外(トラブル)だけ上司が判断する。これは組織における「例外による管理」という極めて効率的な調整手法です。
📝 「一言まとめ」
「ルーチンは『仕組み』に任せ、トラブルは『人間』が解決する。これが組織を回す最短ルート。」
組織論では、一見難しそうな「〇〇の法則」といったカタカナ用語を、全く別の文脈に紛れ込ませる引っかけが多発します。用語に惑わされず、選択肢オのような「組織として当たり前で合理的な動き」を選べるかどうかが、合格への分かれ道です。
