23.変革に抵抗する「4つの壁」
中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)
企業経営理論
第23問
組織における個人が組織変革に抵抗を示す理由に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 外部環境が変化しているのに、組織内の慣習が従来の安定的かつ効率的な仕事の進め方を維持し強化していることに対して、危機感を抱くから。
イ 組織変革によって、従来よりも仕事の成果がうまく出せなくなることを心配するから。
ウ 組織変革によって、新しい仕事のやり方が少なくとも短期的には従来よりも非効率になると感じるから。
エ 組織変革によって、自らの職務にとって未知で不確実な状態がもたらされることに不安を感じるから。
オ たとえ客観的に外部環境が変化したとしても、偏った情報を収集したり、情報を偏って解釈したりすることで、従来と同じ環境が現在も継続していると考えるから。
この問題を解くカギは、人がなぜ「今のままでいたい」と思うのか、その心理的・構造的な理由を整理することです。
- 個人的要因:
- 経済的不安: 「給料が下がるかも」
- 未知への不安: 「新しいやり方ができるか怖い」
- 慣習(サンクコスト): 「今までこうやってきたのに」
- 選択的情報の知覚: 自分に都合の良い情報だけを見て、変化の必要性を無視する。
- 組織的要因:
- 構造的な慣性: 既存のルールやマニュアルが変化を阻む。
- 専門性の脅威: 変革によって自分の専門知識が不要になることを恐れる。
- パワーバランスの変化: 自分の部署の権限が弱まるのを防ぎたい。
🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)
この問題は**「最も不適切なもの」を選ぶ間違い探しです。「変革に抵抗する理由」になっていないもの、つまり「変革を受け入れる**理由」になってしまっているものを探します。
- ア:外部環境が変化しているのに、〜慣習を維持〜していることに対して、危機感を抱くから。
- ❌ 不適切(正解): これが「最高に気の利いた」ポイントです。**「危機感を抱く」のは、変革を後押しする「動機」**であって、抵抗する「理由」ではありません。危機感がある人は「このままじゃまずい、変わらなきゃ!」と考えます。
- イ:〜成果がうまく出せなくなることを心配するから。
- ⭕️ 適切(抵抗の理由): 「失敗したくない」という個人的な不安は、強力な抵抗の理由になります。
- ウ:〜短期的には従来よりも非効率になると感じるから。
- ⭕️ 適切(抵抗の理由): 「習熟するまで面倒だ」「今のやり方の方が早い」という心理的コストは、変化を拒む要因です。
- エ:〜未知で不確実な状態がもたらされることに不安を感じるから。
- ⭕️ 適切(抵抗の理由): 人間は本能的に「わからないもの(不確実)」を避ける傾向があります。
- オ:〜偏った情報を収集したり、〜従来と同じ環境が現在も継続していると考えるから。
- ⭕️ 適切(抵抗の理由): これが「選択的情報の知覚」です。現実を直視せず「まだ大丈夫だ」と思い込むことで、変革を拒絶します。
📝 「一言まとめ」
「『このままじゃマズい!(危機感)』は、変革のエンジン。 『今のままがいい!(現状維持)』は、変革のブレーキ。 この問題は、ブレーキの中身を聞いているのに、一つだけエンジンが混ざっています。」
診断士試験では、「抵抗の理由」と「変革を促進する要因」をすり替えるひっかけがよく出ます。アの「危機感」は、ルウィンの変革プロセスでいう「解凍(現状を疑う)」に必要なポジティブな力であることを覚えておきましょう。
