26.パワハラの3要素と6類型

中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)

企業経営理論

第26問
 労働施策総合推進法第 30 条の 2 に規定されている、いわゆる「職場におけるパワーハラスメント」および厚生労働省の指針に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問における厚生労働省の指針とは、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を指す。


ア  1 人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させるなどの「人間関係からの切り離し」は、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型に含まれる。
イ 事業主は、職場におけるパワーハラスメントを防止するために雇用管理上の措置を講じなければならないが、常時雇用する労働者が 10 人未満の事業所は、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知するなど相談体制を整備する義務までは負わない。
ウ 職場におけるパワーハラスメント該当性の判断は、労働者個人の主観に基づき行われることから、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導であっても、労働者が不満に感じる場合には職場におけるパワーハラスメントに該当する。
エ 職場におけるパワーハラスメントにいう「職場」とは、労働者が通常就業している場所を指す。したがって、社外における取引先との打ち合わせ場所(接待の席を含む)は「職場」に該当することはない。


この問題を解くカギは、厚生労働省が定める「パワハラ」の厳密な定義を把握することです。

  1. パワハラの3要素(すべて満たすとパワハラ):
    • 優越的な関係を背景としていること(上司から部下だけでなく、集団から個人も含む)。
    • 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること。
    • 労働者の就業環境が害されること。
  2. 代表的な6類型:
    • ①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し(無視・孤立)、④過大な要求、⑤過少な要求、⑥個の侵害。
  3. 事業主の義務: 企業の規模にかかわらず、相談窓口の設置などの防止措置を講じる義務があります(中小企業も2022年4月から義務化)。
  4. 「職場」の範囲: 通常働いている場所だけでなく、出張先、打ち合わせ場所、接待の席、忘年会なども含まれます。

🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)

この問題は、パワハラの「定義の広さ」と「義務の範囲」を正確に理解しているかを確認するゲームです。

  • ア:1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、〜「人間関係からの切り離し」は、〜代表的な言動の類型に含まれる。
    • 正解: 完璧です。パワハラは上司からだけではありません。同僚の集団による無視は「優越的な関係(数の力)」を背景とした「人間関係からの切り離し」に該当します。
  • イ:〜常時雇用する労働者が10人未満の事業所は、〜相談体制を整備する義務までは負わない。
    • 間違い: 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づき、事業主の規模を問わず、全ての企業に防止措置を講じる義務があります。「10人未満だから免除」という規定はありません。
  • ウ:〜労働者が不満に感じる場合には職場におけるパワーハラスメントに該当する。
    • 間違い: パワハラの判断は「労働者の主観」だけでは決まりません。客観的に見て「業務上必要かつ相当な範囲」で行われる適正な指導であれば、本人が不満を感じてもパワハラには該当しません。
  • エ:〜社外における取引先との打ち合わせ場所(接待の席を含む)は「職場」に該当することはない。
    • 間違い: 「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所すべてを指します。取引先での打ち合わせや、実質的に業務の延長である接待の席も**「職場」に含まれます**。

📝 「一言まとめ」

「パワハラは『場所』も『相手』も意外と広い。 取引先での無視もパワハラだし、部下から上司への突き上げもパワハラになり得ます。ただし、『本人の主観』だけでパワハラが決まるわけではない、というバランス感覚が試験のツボです。」

選択肢エのように「〜に該当することはない」という極端な限定は、ビジネス法務系の問題ではまず間違い。また、ウの「主観 vs 客観」の対立構造は記述式(2次試験)でも問われる本質的な視点です。

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