28.リサーチの「落とし穴」と「妥当性」

中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)

企業経営理論

第28問
 マーケティング・リサーチに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 1950 年代から 60 年代にかけて、アメリカでは精神分析や臨床心理学を応用して消費者の深層心理を調べるニューロ・マーケティング・リサーチが盛んに行われたが、分析者による恣意的な解釈などが入り込む傾向があり、次第に行われなくなった。
イ 自社の製品に対する顧客の満足度(変数X: 7 点尺度で回答)と顧客の年収(変数Y)との間の相関分析を行った結果、相関係数がゼロであったため、XとYは相互に無関係であると結論づけた。
ウ 自社の製品に対する顧客の満足度(変数X: 7 点尺度で回答)を連続尺度とみて顧客の居住地(変数S:都道府県で回答)との間に関係があるかどうかを調べるために、カイ 2 乗分析を行った。
エ 自社の製品を購入した顧客からサービスセンターに寄せられる手紙とハガキの内容を分析した結果、製品Aより製品Bに寄せられる不満の方が多いことが分かった。このため、直ちに製品Bの販売を中止することにした。
オ 自社の製品を購入した全顧客を対象とする全数調査は、得られる回答データの正確性が高い一方で時間とコストの観点から現実的ではないため、単純無作為抽出法、層化抽出法などの標本抽出方法によるサンプリング調査が行われることが多い。


この問題を解くカギは、データが持つ「限界」を正しく認識することです。

  1. 相関関係 = 因果関係ではない: 相関係数がゼロだからといって、全く関係がないとは言い切れません(非線形な関係があるかもしれないため)。
  2. カイ2乗分析: 「血液型と性格」のように、数え上げることができるデータ(名義尺度)同士に関係があるかを調べる手法です。満足度(順序尺度)に使うのは一般的ではありません。
  3. サンプリング(標本調査): 全員に聞く(全数調査)のは大変なので、一部を抜き出して調査します。この際、抜き出し方(無作為抽出など)が重要になります。
  4. 定性情報の罠: クレームの手紙が多いからといって、製品自体が悪いとは限りません。単に「その製品のユーザーは手紙を書くのが好き」なだけかもしれません。

🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)

この問題は、論理的な「飛躍」や「手法の誤り」を見抜くゲームです。

  • ア:1950年代〜60年代に〜ニューロ・マーケティング・リサーチが盛んに行われた〜。
    • 間違い: ここが「気の利きどころ」。脳科学を応用した「ニューロ・マーケティング」は2000年代以降の比較的新しい手法です。50年代に盛んだったのは、精神分析などを応用した「モチベーション・リサーチ」です。
  • イ:相関係数がゼロであったため、XとYは相互に無関係であると結論づけた。
    • 間違い: 相関係数が測れるのは「直線的な関係」だけです。山なりの形(2次関数的)などの特殊な関係がある場合でも相関係数はゼロになるため、「無関係」と断定するのは危険です。
  • ウ:満足度(変数X)と居住地(変数S)の間に関係があるかを調べるために、カイ2乗分析を行った。
    • 間違い: 満足度は通常「1〜7点」といった順序を持つデータです。一方、カイ2乗分析は「東京・大阪」といった分類(名義尺度)に使います。尺度を「連続尺度とみて」強引に適用するのは、統計学的に不適切です。
  • エ:不満の手紙が多いことが分かったため、直ちに製品Bの販売を中止することにした。
    • 間違い: 極端すぎます。手紙は「わざわざ書く人」だけの偏ったデータ(自発的回答)です。市場全体の声を反映しているとは限らないため、これだけで販売中止を決めるのは経営判断として短絡的です。
  • オ:全数調査は、〜現実的ではないため、単純無作為抽出法、層化抽出法などの〜サンプリング調査が行われることが多い。
    • 正解: 完璧に正論です。コストと時間を考えれば、適切に選んだ一部の人に聞く「サンプリング調査」がリサーチのスタンダードです。

📝 「一言まとめ」

「データは『語る』が、嘘もつく。 手法(カイ2乗)や時期(ニューロ)の矛盾を突くか、エのように『極端な判断』を避けるのが、マーケティング問題の鉄則です。」

統計用語が出てくると身構えてしまいますが、診断士試験では「当たり前のことを当たり前に言っている」オのような選択肢が正解になることが多々あります。

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です