31.デジタル広告と消費者反応モデル

中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)

企業経営理論

第31問
 マーケティング・コミュニケーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。


ア インフィード広告は、SNS のコンテキストやデザインとマッチさせて表示され、あたかも投稿の 1 つであるかのようにタイムラインに溶け込み、ユーザーの利用体験を妨げないことを目指す広告である。
イ コミュニケーションに対する消費者の反応を表したモデルである AIDMA モデルや AISAS モデル、FCB グリッドなどの階層モデルでは、消費者の反応が認知段階から感情段階を経て行動段階に進むと考える点で共通している。
ウ サードパーティ・クッキーの利用が法律などにより制限されると、インターネット広告の配信精度や広告効果が低下するリスクがあるが、リ・ターゲティング広告には影響はない。
エ 日本では 2022 年に改正された個人情報保護法において、クッキーは個人情報であり、個人情報保護の対象に含まれると規定された。
オ ネイティブ広告においては、広告のデザインとフォーマットを広告が配信される媒体の記事やコンテンツの形式や機能と一体化させることが必要であるが、広告の内容やクリック後に表示される遷移先のコンテンツは自由に設定することができる。


この問題を解くカギは、広告がいかに「自然に」ユーザーへ歩み寄り、かつ「プライバシー」の壁に直面しているかを理解することです。

  1. ネイティブ広告とインフィード広告:
    • ネイティブ広告: メディアの内容やデザインに自然に溶け込ませる広告の総称。
    • インフィード広告: その一種で、SNSのタイムラインやニュースサイトの記事一覧(フィード)の間に挿入される広告。ユーザー体験を妨げないことが特徴です。
  2. 消費者反応モデル(階層モデル):
    • AIDMA: 注意(A)→興味(I)→欲求(D)→記憶(M)→行動(A)。
    • AISAS: 注意(A)→興味(I)→検索(S)→行動(A)→共有(S)。
    • 共通点: いずれも「認知(知る)」から始まり、「感情(好きになる)」を経て、「行動(買う)」に至るという階層的なステップを前提としています。
  3. クッキー(Cookie)規制:
    • 第三者が発行する「サードパーティ・クッキー」は、プライバシー保護の観点からブラウザ側(GoogleやApple)で制限が進んでいます。これにより、過去の閲覧履歴を追跡するリターゲティング広告は大きな打撃を受けています。
  4. 2022年改正個人情報保護法:
    • クッキー単体では個人情報に該当しない場合もありますが、提供先で個人データと紐付くことが想定される場合は「個人関連情報」として本人同意が必要になるなど、規制が強化されました。

🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)

この問題は、最新のデジタル用語と伝統的な理論の「共通項」を正しく捉えているかを確認するゲームです。

  • ア:インフィード広告は、〜タイムラインに溶け込み、ユーザーの利用体験を妨げないことを目指す広告である。
    • 正解: 完璧です。SNSの投稿のふりをして流れてくるあの広告の定義そのものです。
  • イ:〜AIDMAモデルやAISASモデル、FCBグリッドなどの階層モデルでは、〜認知段階から感情段階を経て行動段階に進むと考える点で共通している。
    • 間違い: ここが「超・気の利きどころ」。FCBグリッドが含まれているのが罠です。FCBグリッドは、製品の関与度や知覚(思考・感情)によって「感情→認知→行動」など反応順序が変わることを説くモデルであり、一律に認知→感情→行動と進む「階層モデル」の枠組みを超えています。
  • ウ:サードパーティ・クッキーの利用が〜制限されると、〜リ・ターゲティング広告には影響はない。
    • 間違い: リターゲティング広告(一度見たサイトの広告が追いかけてくる仕組み)はサードパーティ・クッキーに依存しているため、最も大きな悪影響を受けます
  • エ:日本では2022年に改正された個人情報保護法において、クッキーは個人情報であり、〜と規定された。
    • 間違い: クッキーそのものを一律に「個人情報」と定義したわけではありません。特定の条件下で「個人関連情報」として規律の対象になったというのが正確な法的解釈です。
  • オ:ネイティブ広告においては、〜遷移先のコンテンツは自由に設定することができる。
    • 間違い: 広告本体がメディアに溶け込んでいても、クリック先のページが全く関係ないものや詐欺的なものであれば、媒体の信頼性を損ないます。JIAA(日本インタラクティブ広告協会)などの指針により、コンテンツの一貫性や明示性が厳格に求められます。

📝 「一言まとめ」

「インフィード広告は『忍者のような広告』。 景色(タイムライン)に溶け込み、ユーザーの邪魔をせずに情報を届けるのが信条です。」

選択肢イの「FCBグリッド」のひっかけは、診断士試験のマーケティング論における最高峰の難問パターンです。「全てのモデルが同じ順番(認知→感情→行動)で動くわけではない」という、マーケティングの多様性を理解しているかが問われています。

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