15.組織の「機械」と「生き物」
中小企業診断士試験 令和7年度(2025年)
企業経営理論
第15問
組織構造や管理システムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア J. ウッドワードによれば、「単品生産・小規模バッチ生産」から「大規模バッチ・大量生産」、さらに「装置生産」へと技術の複雑性が高まるにつれて、組織の階層数は増加し、管理者や監督者の全従業員に対する割合、および直接労働者に対する間接労働者の割合も高くなる。
イ J. ウッドワードによれば、「単品生産・小規模バッチ生産」や「装置生産」を行う企業では、作業の標準化と手順の明確化が重要であり、「機械的管理システム」の導入が最も適している。
ウ P. ローレンスと J. ローシュによれば、不確実性の高い環境で高業績をあげていた組織は、組織全体を統合する取り組みをできる限り抑えながら、各職能部門がそれぞれのタスク環境に適応できるよう高度に分化していた。
エ T. バーンズと G.M. ストーカーによれば、「有機的管理システム」は、組織メンバーの職務内容や役割に柔軟性を持たせる一方で、情報と意思決定の権限を上位に集中させることにより、組織の分化と統合の両立を実現できる。
オ T. バーンズと G.M. ストーカーによれば、組織のライフサイクルにおいて、起業者段階や共同体段階では「有機的管理システム」が採用されるが、公式化段階や精巧化段階に移行すると、「機械的管理システム」が採用される傾向が高くなる。
この問題を解くカギは、状況に応じて「カチッとした機械」が良いのか、「柔軟な生き物」が良いのかを見極めることです。
- 機械的管理システム:マニュアル重視、中央集権、分業徹底。
- 向いている時:環境が安定している、単純な大量生産(ウッドワードの「大量生産」段階)。
- 有機的管理システム:柔軟な役割分担、分権的、対話重視。
- 向いている時:環境の変化が激しい、オーダーメイドや高度な自動化(ウッドワードの「単品」や「装置」段階)。
- 分化と統合(ローレンス&ローシュ):環境が複雑なほど、部門を分ける(分化)だけでなく、それらを繋ぎ直す(統合)力も強くしないと組織はバラバラになる。
🎯 「気の利いた」選択肢の捌き方(最短ロジック)
この問題は、提唱者と理論の中身が「逆」になっていないかをチェックするゲームです。
- ア:ウッドワードによれば、〜技術の複雑性が高まるにつれて、組織の階層数は増加し、〜
- ✅ 正解:その通り。単品生産(単純)→大量生産→装置生産(複雑)と進むにつれ、管理の難易度が上がり、ピラミッドの段数(階層)や、現場を支える間接部門の割合が増えるというのがウッドワードの調査結果です。
- イ:ウッドワードによれば、「単品生産」や「装置生産」を行う企業では、「機械的管理システム」の導入が最も適している。
- ❌ 間違い:逆です。両端の「単品(オーダーメイド)」と「装置(全自動)」は、現場の判断が重要なため**「有機的」**が適しています。真ん中の「大量生産」こそが「機械的」の出番です。
- ウ:ローレンスとローシュによれば、〜組織全体を統合する取り組みをできる限り抑えながら、〜
- ❌ 間違い:ここが最大の罠。分化(バラバラにする)が進むほど、それをまとめる**「統合」の取り組みも「強力」にする**必要があります。「抑える」のはNGです。
- エ:バーンズとストーカーによれば、「有機的管理システム」は、〜権限を上位に集中させることにより、〜
- ❌ 間違い:権限を上に集中させるのは「機械的」の特徴です。「有機的」は現場に権限を分散させます。
- オ:バーンズとストーカーによれば、〜公式化段階や精緻化段階に移行すると、「機械的管理システム」が採用される傾向が高くなる。
- ❌ 間違い:理論の混ぜこぜです。ライフサイクル論(起業者段階など)はクインとキャメロンらの説であり、バーンズとストーカーは「環境の不確実性」に注目した人たちです。
📝 「一言まとめ」
「組織に『唯一絶対の正解』はない。 単純な大量生産なら『機械』のように。複雑な特注品や変化の激しい環境なら『生き物(有機的)』のように振る舞え。」
選択肢アは、一見すると「本当か?」と疑いたくなるほど細かいデータ(割合など)に触れていますが、ウッドワードの結論そのものです。一方、ウやエのように「定義を逆にする」のは試験の定番パターン。落ち着いて「逆じゃないか?」と疑う目が合格を引き寄せます。
